さて。
えー、今回の目的の2つの展覧会の二つ目、岩手県立美術館のアントニオ・ロペス展にいってきた。朝に。
盛岡の街、わりと中心から離れていきつつある県庁のうしろの北ホテルをとってよかった。
横断したし。
つまり盛岡駅の西口というか裏側だが、新興でもあるが荒野でもある。
あるいて美術館まで行くが。
荒野である。ヨーロッパ的である。
大きい道、車、そして歩道を歩く人は少なく。自転車が通り。モスクワでこんな感じだったような。
日本が狭いというのは嘘で、点在したり、散逸したり、集積したりしているのである。
さて岩手県立美術館。なんちゅうか。硬質ではあるのだが。wikipediaによれば設計は日本設計。
うーん。
いやね。皆が金沢21世紀をまねすればいいとは思わない。それぞれにやり方があるだろう。
しかし。
なんかねー。「開かれてある」感じがしない。最大のポイントは入り口のドアがガラスではなく光を通さないドアであることだ。
閉じられている。
最初に外観を見て、どこが入口か分からなかったしな。
まあいいけど。
アントニオ・ロペス展。画家でありブロンズもつくる人、スペインが誇るべき現在の画家。
といっても突拍子もないことをする人ではない。たぶん地道の人である。と思う。
彼の作品はいろいろであるが、鉛筆による素描が一番すげえと思うのである。質感を鉛筆の濃淡で表わすことの技術である。
おそろしいものだ。
いったいどういうものなのか。
かじっただけだが、西洋絵画というものは「輪郭をあらわすのに輪郭線を描いてはいけない」ようだ。線で区切るのは愚の骨頂。
濃淡で表わす。
点の集積でもいい。
彼が娘の立つ姿を描いた代表作があるわけだが。おそらくはコーデュロイのような暖かい生地であろうコートを着て立っている娘。生地がどんな触感なのかが鉛筆による濃淡表現でわかるってどういうことよ。
同じく、かぼちゃを素描で表したり、建築中だった建物がまだ骨組みを外に表しているやつを素描したり。
鉛筆画がおそろしい完成度。
一方で色のついた絵画については、思ってたよりも「完全で完璧な写実」ではない感じだった。ざらざらしていてノイズを含有している感じの絵だ。
でもそれは彼の言葉でわかった。
彼の目指しているものは「最初に感じた感度のままに絵を表す」ことであって、「現実を完全に写し取ることではない」のだ。と、宣言していたのだった。
彼が若いころに描いた人物画とその背景には1950年代のスペインの田舎をみることができる。ほとんど西部劇のアメリカに似たような荒野である。乾いているしその中にぽつりと街があって人がそのとてもせまい街のわずかにある街路に立っている。街路といっても家がないと街路はできないのでわずかにある家たちのその前に立つしかないのである。
なんというか芸術家というよりも「なにかを写し取って誠実に描く」ことを徹底することに徹した人のような気がした。
彼はアイコン的な絵画を一切描いていないし、彼の絵画をアイコン的に加工することはできないからだ。
アイコン。
ちいさい記号。
記号にすることで流通が可能になって電子化してぶらーっとしてしまうのだが、絵画のそのものは大きさと質感があって、電子化して流通することは不可能だ。
たとえばアントニオ・ロペス「死んだ犬」を、果たしてそのまま電子化できるか、ってそれは不可能なのである。浮き彫りがあるから、三次元だから。
(オレにはあれは三次元にみえたんだけど違うかな>>?)
まあね。ブロンズの重い感じと大きさと光を反射する感じを遠隔地で電子的にあじわう方法は存在しないし今後も存在しないだろう。
アイコンは世界のどこでも流通して電子化されて味わうことができる。
とか考えた。
スペインに行きたくなった。
そして荒野とはどのくらい荒野なのか見たい。
歩くと体調がよくなる。
一日の後半は全部ドライブだ。盛岡市内をうろうろして、ロードサイド風景をさんざん見たあとに盛岡南ICから東北道に乗った。
ロードサイドというのは全国どこにもあるような企業たちの店たちがどこにもたくさん大きくある風景である。
高速は長い。
カツカレーを食い、メンチカツとコロッケを食い、チップスターを食い、渋滞の下り東北道鹿沼からのあたりでチョコパンを食った。渋滞はつらい。
ラジオ。
LFで夏目ちゃんのラブゲッチュを聴き、菊地夜電波の先週分をきき、サウジ・サウダージをきき、やくしまるえつこのサウンドクリエイターズファイルを聴き(おりしもいまその二回目・最終回をききつつ日記を書いている)、山里不毛な議論のクズ三銃士の回を聴いた。
やくしまるえつこさんの声が、あまりにも魅惑的なので、これはおそらくこの録音を何度でも何度でもきくだろうな。
菊地夜電波でのaiko「くちびる」の回があまりにも濃密なので何回でも何回でも聴いてしまうように。
エチオピアも行ってみたいもんだ。
いったいどういう食い物があるのか。