読書感想日記『とんこつQ&A』

といってもこの短編集の表題作「とんこつQ&A」しか

読んでいない

 

恐ろしい話である

 

先に違う話をする

 

オレが「おそろしい映画」と思って永遠に忘れられないのが

リリイ・シュシュのすべて」であるが

どこが恐ろしかったのかを書く

それは

恐怖なのだが

恐怖の正体はそれはどこまでも終わらないし

止まらないしあくまで鋭い刃はいつまでもそこにある

という恐怖である

実在感である

恐怖の実在感

圧倒的に北関東にその中学の中に荒れ狂う暴力があり

レイプがあり

強制的に命令する者がおりその者の没落があり

暴力が連鎖しておりそれは終わることがない

という感覚だと思う

おそろしいし終わりもないし誰もそれを

制裁する者もおらず

終わらせようとする者もいないのである

 

そこで思い出すのがついさきほど

みた

映画「こちらあみ子」である

 

これもまた終わらないことを描いているのではないかと

思うようになった

あみ子は「変わった子」といわれるがあれは

変わっているのではなくて

生来

つまり出生からずっとつづく「発達の障害」であるとオレは

みている

それを障害だなんてとんでもない!と

言う人もいるとは思うが

すみませんね

オレにはあみ子は発達障害に見えるのである

そしてそれは

実際に周囲とか家族からは

障害である(本人のせいではなくそのようにうまれついた)と

いう認識をされているようには見えないのである

そういう映画である

(基本原作もその線だと思うが未読である)

 

だからあみ子のいわば「受難」は終わらないのである

 

というか本人は困ることはあっても本人がそれを受難であるとは

思っていない(ように観客からは見える)

 

もっとも重要なことは

オレ(観客)は一切なにもあみ子に感情移入もできないし

どのようにそのような行動が生まれたのか

(動機)は全くわからないのである

母にむかって

うまれてこなかった年少のきょうだいが

死んだ

ことを語るあみ子が何を思ってそう言ったのかは

さっぱりわからないのである

 

それはオレが「そういうことは言ってはいけない」という文化のもとで

育ったからであり

 

通常かんがえれば現代日本の家庭でそだったあみ子もまた

その文化を共有しているはずなのに

 

あみ子は

それを共有していないのである

だから

コードがちがう

文化のコードが違うのである

だから

違う行動をするのだ

そしてそれは周囲とのあいだに軋みを産むし

がっこうでもいじめにあうし

家族からも捨てられるのである

あみ子にはなにも解決がなく変化もないのである

 

そこが恐ろしいと思うのである

 

なぜならそのままずっと続くからだ

 

さてやっと『とんこつ』

に入るが

 

ここで何が恐ろしいかといえば

主人公

主人公は1人称で語っている

 

しかし周囲の人物たちがまずは書割的である

なんというか

 

それは「台本」を読むかれらの行動からしても書割的である

 

台本は主人公が書いているのだが

 

そして

 

なんというか主人公は自分が「おかしい」ことに無自覚であるが

これは「おかしい」と言ってはいけないタイプのものかもしれない

 

しかしあきらかにおかしいのである

奇妙というか

奇妙でいけなければ

その能力がないともいえる

 

ある種のなにかの「欠けた」能力である

 

それが無自覚である

 

そして主人公以外の登場人物は(店の主人とその息子)

主人公をその欠けた部分のために責めるということをしない

 

なぜしないのか

 

これを「優しいから」で済ますことはできるのだろうか

 

オレはできないと思うのだが

 

そしてさらに第4の人物も

欠けている人物であり

 

そのハーモニーはあきらかに

くるっているのである

 

くるっているとかそういう修飾を使うのは敗北であるが

ここでは「リズムがくるっている」とか

「調子がくるう」みたいなことだと思ってほしい

 

でも主人公と第4の人物はだいたい同じような人間なのである

 

そして主人公は第4に対してわかりやすく排斥したいと思い

そのあとに利用しようとしはじめる

 

なんというか主人公も無能だし

それ以外の234の人物たちも

また無能である

書割的な無能さともいえる

なにしろ台本を読むしかできないのだから

そういう設定だから

 

そこが恐ろしい

 

この短編は主人公がうまいこと234の人物を書割台本であやつって

自分にとって居心地のいい世界をつくる(場所をつくる)

そしてそれができているところで終わるのだが

 

要素としてそれが終わりそうだとか破綻しそうだとかそういうことが

何もないのである

 

だからたぶんそのままこのおはなしが終わってもその店は永遠にそのままで

つづくのであろう

 

そこが恐ろしい

 

ずっとそのままだなんて

なんて恐ろしいのだろう

 

それガオレの読書感想である

おわり