そんなところで二人は育った。山王さんだけではない。佐藤くんもだ。そのことを山王さんは言った。私ははっとした。そうなんだ。佐藤くんも、ここで、6年間育ったのだ。けっしてただ立ち去るためにここに来たわけではないんだ。それはついに完成したデパートの上の観覧車で。桜島を見ながら。そういえば桜島はいつもそこにあった。前のデートでも。「このあと金色紫色に変わるんだよ  こんな日はめったにない」  そして、市街地から、家へかえる汽車の窓から。いつもそこに櫻島があった。とつぜん旧字になった。あの海は噴火湾