こんな凡庸な話になってしまったこともショックだが所詮ワシも小市民よ。そんなもんよ。好きだから、ショックなのさ。美貴様推しのみなさんのショックも想像するにあまるものがあり、衷心よりお悔やみ申し上げます。何卒はやく立ち直られますように。どうすればいいのかなー。あれはちょっとした遊びでした、というとまたこれがどうにも変で。
 とにかく人間には「過去にも未来にも成立し得ない事態・事象・もの」を、想像や観念の上だけで成立させてしまうという特殊な能力がある。時間を超えるとはこのことである。これがために、会ったことも話したこともないアイドルさんなどを好きになってしまうのである。会ったことも話したことも触ったこともあるって?それは、幻視です。ま・ぼ・ろ・し、です。握手会というのがあったんでしょう?ね。それはね。かすみと消えたのです。あなたの見たものは風にそよぐ葦、あなたの触った手は狸の前足、あなたの話した相手は九尾の狐。
 それでも好きになった事実は本人にとっては変えがたい確たる事象なのであった。
 しかし、好きになられた方にしてみれば身に覚えが無いのであった。
 よくもまあののさんも結婚まで持ち込んだよなあ、考えてみれば、改めて驚嘆するよ。すげえよ。誰にもできないぜ。そんじょそこらの小娘にはな。