新聞小説「また会う日まで」連載第520回

ついに主人公は死して

葬儀となった

語り手は娘の洋子である

 

娘は亡き父がよく語ったことを記憶しそれを回想する

この「また会う日まで」とは

死に際して魂が肉体を離れ天へとascend することを語っている詩

なのだが

まあ天でまたあなたがたと再会するのだから

ということなのだろう

洋子いわく

父は南洋の島へと測量航海(天文)に行った旅で

現地の島の住民にキリスト教のことを語って

それは宗教者であることのアイデンティティ

そしてさいごにその聖歌をみなでうたって

たのしかったの思い出を

なんども語ったということで

つまり

軍人でありながら水路部だったから戦闘に直接関与

していないという言い方もできるが海軍軍人だから

戦争のことに責任がないわけがないのである

組織に歯向かうことも意見することも退官することもできなかった

それをもってこの秋吉を責めるわけにもいかない

 

ものの見るみかたや意見は変わる

 

オレが父が過去の栄光のことだけを何度も繰り返し語るのを

きいていらんないのは

哀れに思うからであるが

これが哀れではなく

こういうことはよくあることだ

と思えるようになればそれはまた変化だと思う

オレだって過去のたのしかったことを日記に何度も書くから

 

なんにせよ秋吉の病床での独白体からはじまった小説は他者の

語りによるエンディングをむかえそうだ

もうちょっとである