アンソーシャルディスタンス

「アンソーシャルディスタンス」短編集より

表題作「アンソーシャルディスタンス」

 

セックスたくさんしている若い二人は大学生で

就職間近で

コロナ禍で

妊娠して中絶して

女は昔から希死念慮(作中ではカタカナで語られる)をくりかえし

男はすべてを嫌だと言いながらうまくやってのけてブラックな就職先も決めてきた

男の一人称が女の一人称と交互に入る小説

この短編集でははじめて男の一人称だ

男はそれなりの意思をもっているものの

女に心中しようと言われるとああしようしようと同意する

でも実際には勢いで心中することができないし

なにかこう女の心の中の心中したい気持ちとはずれがあることを自覚

していてそれを女に告げる

男女は就職祝い金をつかってホテルで豪遊して

たくさんセックスする

セックスはどうやら気持ちがよく快感をともなっているようで

作中で何回も二人はセックスするし

それは合意のセックスで

心中したいわりには元気だなあんたら

と言いたくなるが

セックスできているならたぶん死なないのではないかとも

思えてくる

いままでこれでこの短編集で4作読んだが

なにかこう元気さというのは失われていないというか

なんというか

デバッガーにしても死なないし

「(意識)」の女はセックスを今後も続けるし

ストロングゼロの女はストゼロを最後まで飲みつづけていてまだ死んでいない

 

アンソーシャルの女は今後も心中も自殺もしなそうな気がするし

それは男が作中でどことなく予感しているように強さをもっている

からではないかとも思う

矛盾だが「死にたい」気持ちが確定しているその確定の強さみたいなのが

あるから死なないのではないかという感じ

を感じる

 

面白い

 

あと1作でこの短編集もおわり

 

さいごは「テクノブレイク」