姉の結婚7巻 感想 ネタバレあり

姉の結婚7巻、感想です。ネタバレありです。見たくない人は見ないでね。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
このくらい空ければいいか。
さて。7巻、急展開ですなあ。
いろいろ有りすぎてまとめらんない。しかしわかることもある。大事なことはきっと優先順だ。1番に大事にしている事があれば、それをしないと行けない。どこにも行けない。
愛されたい愛したい、愛し愛されたい。多分それが一番だ。他人との結びつきを求めるのだから高いハードルがあって、それは2人が互いに同じ気持ちじゃないといけないわけで。
人物別に整理。
ヨリちゃん。仕事は順調。エッセイは認められ本業の図書館員は継続、島プロジェクトは好調だが妬みによる足引っ張りが多分次巻、ある。愛。愛されたい。かなわなくても愛されたい。他人の旦那だ。自分のじゃない。あれは他人の旦那だ。家庭をつくるのはなにか怖いところもあった。しかし7巻ではひとつの変化がある。
留意子ちゃん。ルイちゃん。ヨリちゃんの妹。実は父が違う。母は同じ。重大なネタバレ。ここ重要。しかし細密に書いても面白くないので、読みたい人は新刊で買いましょう。そしてルイちゃんは秘密を知った上で旦那を得た。愛し愛されている夫婦である。若いけどきっとうまくいくだろう。
ヨリちゃんに戻る。そういうわけで妹の出生の秘密を知ったのことで(えっと、つまり父は他人の子を孕んだ妻を、その子を、受け入れて自分の子として育てたのだね)、実は父との、形式上での和解に至るというね。形式っていうのはオレの主観だけど。でも父もヨリちゃんのことちゃんと愛してるって言葉になったんだからいいじゃん。それで家族のことはヨリちゃんのとこでは一つ収まったわけだ。
 しかし収まらない夫婦とひとつの不倫があった。真木くん夫婦である。子供を身篭った。実際には不倫相手の子だ。ここにさっきの岩谷家とのクロス。関係の連想。他人の子供を、「旦那との間の子供」として育てた方と、そして。真木くんの妻はそうでない方を選んだ。そしてこの妻が初めての行動にでた。実家も真木くんも捨てるのである。ここ大胆。そして。多分、母子2人だけで、生きていくのだろう。
 この長い姉の結婚という話には複数の階層があって。結婚が問題なのではなく人間の幸福のあり方が問題なのだ。と、いつも色々な角度から、光を照射している。
 例えば真木くんの妻がー理恵さんですね、理恵さんがなぜ真木くんと結婚したか?政略結婚で、自分には短大時代からの愛人関係がいて、それはそれでと都合よくいけたから?正直オレは6巻までずっと理恵さんの動機というかスタンスが謎だった。しかし7巻でハッキリしてスッキリした。
 彼女は初めて愛人から「離婚して君と一緒になる気など毛頭ない」ことを知らされる。それまでは心中で、彼にとっては、彼の妻より自分のほうが愛されているくらいの自信があったのだろう。状況をコントロールしているのは自分だと。
 だが、状況は変化し、自分の夫は「離婚してくれ」と言いだすし、子供は妊娠するし、おろせないし、そう、それは荷物ではなくて生きた生命だ、そして愛人だと思ってた男は自分を遊び相手で快楽のパートナーとしか見ていなかった。
 そこで彼女は全部を捨てるわけでこれは大きい。
 彼女にとって、なぜ、自分が離婚する気など毛頭ないのに、愛人がいつかは妻と離婚してくれるのではないかと根拠ないぼんやりしたイメージを抱いていられたか、それは夢とか現実感とかの間にある「暖かい中間の空間」を漂っているクラゲのようなものにも似た生活をおくっていたからではないのか。
 専業主婦、生花の先生、優雅な暮らし、あくせくしなくていい暮らし、別の愛人とかもとっかえひっかえできる生活。
 しかし人生はそんな「根拠ない淡い期待をベースにした暮らし」など許してくれないのであった。
 ヨリちゃんはどうか。彼が奥さんとー彼ってのは真木くんねー離婚してくれるのかくれないのか。ヨリちゃんは理恵さんほどの暖かい中間の空間には生きていないものの、それでもそれなりに歪んでいるしなにかまだまだ混乱を引きずっている。
 夢幻堂に叱られること、離婚するからなんてのは空手形であって常套句だ、そんなのを信じるなんてあんたバカか、と。
 でも結局つまるところ。
 
 信じないとーたとえ根拠がない絵空事でも、信じないと、何かを胸のうちに置いて設置して、自分だけの祭壇を設置して、そこになにかをお供えする、お供えの内容はなんでもいい、結婚の形式だけが維持されますようにでもいいし、家の体面が保たれますようにでも、彼が奥さんと離婚してくれますようにでも、真実の愛を彼と育めますようにでも、
 なんでもいい。この心の中にある祭壇は自分だけのもので、他人からはそれが見えない、知られない。
 そこに飾るものは一番大切なものだ。あるいは一番大切であると自分で決めたものだ。
 
 まあでも次巻は忙しいよ。島プロジェクトのイベント直前で嫉妬によるトラブルは起きるだろうし、前に出てきてた20の女子学生(真木くんに絡んでいた)も再登場するだろうし、真木くんの開業だっていろいろトラブルするだろうし。ヨリちゃんも文章どうすんのかね今後。
 しかし大切なことを決めていればそんなに迷うこともないだろう。
 
 そういうわけで、オレ的には7巻は理恵さんのことがもっとも鮮やかに感じられたのでした。毒オッサンなので、結婚以前のことにも縁遠く、ましてや不倫と妊娠と離婚なんてフルコースでお腹いっぱいであります。女性はすごいね。