金原ひとみ「アンソーシャルディスタンス」から
「ストロングゼロ」読了
アル中小説である
恋愛小説でもあるが
お仕事小説でもあるけど
実際はそうなのか
アル中であるかもしれないいやまだだどうだろう
と思っている本人にとって怖いのは
仕事中に「酒臭い」と言われることで
怖いですね
そんなに美しい顔が重要なんだ
そうなんだ
ふうん
酒はなんでもいいが
結果として記憶を失わせ
記憶がそこで途切れていることが
あとになって恐怖になるのだが
飲めば同じことになると
それは恐怖をまた繰り返すことで
どっちかというとこれを文芸として読むよりは
アル中からのとりあえず今は断酒しているだけの人間として
オレもまたその中間のままなんだけど
それで感じる恐怖というものがあり
なんとも
いえない
気分になるそれは苦いわけではないが
美味しいものではない
文芸としてこの主人公が
壊れていく感じと
壊れながら自分が壊れていくことの実況中継と
いわゆる1人称の
つまりそこにある限界は彼女は自分が感じる自分しか感じられないわけで
感じられない(記憶を失っている時間とか客観的にみた自分の様子とか)もの
は
認識できないというタイプの恐怖がある
そういう意味でも他人から
この短編の中でアル中による社会的信用の失墜が
いろいろそうなりそうなところはあるにしても
具体的に他人からの言葉での指摘があるのが
一回だけで
一回しかないのが逆に奇跡であり
仕事場のデスクで酒のんでいて
まあね
よっぽどお強いのね
本当にアルコールというのはこわいのだが
何がこわいって自分がもう信用できなくなるのが一番怖いのであって
それは生きながら人生がおわっているということで
そういう人たち仕事で見てたけど
まあ
壊れているし
こわれていたね
だからいまは酒の広告がぜんぶ
どういうつもりだおまえら
と思いながらみている
ツイッタならミュートできるけど
TVCMはそうもいかないね
なるべく録画にしてスキップしているけどね
スリップしないようにね
いつでも警戒している
注意報
永遠に
死ぬまで
そして圧倒的に無力な男たち
なにもできない
なにも
鬱になるのはなるとしても
女を口説くのは口説くとしても
なにも達成もできないし
なにも獲得もできない
できないづくしで
どこにも
主人公にも男たちにも
未来が無い
そういう短編
わからないということだけがわかる